ここが違う
有名35mmスプリングカメラ

ビトーll ・ レチナ la ・ カラート36・ イコンタ35


VITO ll       ・       RETINA la      ・       KARAT 36    ・    IKONTA35

 上の四機種は1940年代から50年代のドイツの中級35mmカメラを代表するものです。レンズもビトー・カラースコパー50mm3.5  レチナ・クセナー50mm2.8  アグファ・ゾリナー50mm2.8 イコンタ35・ノバー50mm3.5 と当時の代表的なものです。残念ながらコンテッサのノバーだけがっ普及用レンズです。普及用といってもテッサーとの区別がつきにくいといわれるくらいのものです。
 この四種のスプリングカメラはリジッド型の普通の35mmカメラが定着するまでは小型カメラの完成形でした。
 フォクトレンダーのビトーは3型で距離計連動になっています。コダックのレチナは2型から距離計連動です。アグファのカラート36は戦前の型からこの形でした。アグファの場合普及機は徹底的に普及機になってしますので、高級ランクのカラートが他社の中級機になります。ツァイス・イコンタ35はこの上にコンテッサと言うドレイカイル式距離計を持った最高級機があります。巻き上げ機構等の部分は同じものです。
 見かけはカラートだけが前板飛び出し式他は前蓋のある普通のスプリングカメラです。カラートの形式は持ち運びは小さくても、前蓋が無いのでレンズがいつもむき出しですからレンズキャップが要ります。そういう意味では蛇腹にしたメリットはあまり無いと思います。ただ、内面反射防止には蛇腹はものすごく有効的です。

 巻上げはビトーがノブ、レチナがレバー・ワンストローク、カラートがレバー手前引き、イコンタ35が底面ノブです。
面白いことに巻き上げが重いはずのビトーのノブ式が径が大きいこともあるでしょうが一番スムーズで軽い感じです。カラートがやや重い感じです。これは本来のものか個体差によるのかは分かりません。ビトーの軽さとフィーリングの良さには驚きます。
 カラートの逆方向・引っ張るレバーは操作のしにくいものです。このカメラだけしか使わなければいいのでしょうが普通の逆と言うのは変なものです。同じようにイコンタの底にあって尚且つ感覚的には逆の位置にあるのもなじみにくいですね。
 昔のように一台のカメラしか使わないなら、愛機に慣れれば良いだけですが、今のように色々使うときには世の中の標準を外れたものは戸惑います。
 中判のカメラと違いこの時代の35mmカメラになるとシャッターは右手の人差し指で切るようになっていますから多少の位置の違いはあっても余り問題はないようです。左手でしか切れないカメラは戸惑いますから・・・
 シャッターはビトーとイコンタ35以外はシンクロコンパーです。ビトーやイコンタ35にもコンパーバージョンがあります。シャッター音はコンパーの方が硬い感じの音です。この中でビトーとイコンタ35はセルフコッキング無しです。撮影の上では目測式のハンディよりこちらの方が大きなハンディでしょうね。
 距離調整はビトーとイコンタ35が古いタイプの前玉回転、他の二つは直線ヘリコイドです。理論上は善玉回転は劣ると言われますが、私の目ではそれによる優劣は分かりません。距離目盛の見よさはヘリコイド式のほうが良いものが多いです。

左上・ビトー2  右上・レチナ1a

左下・カラート36 右下・イコンタ35

            カラート*430g            レチナ*510g           カラート*660g

 折り畳んだ状態ですがカラートがほんの少し高さが高くなります。これは距離計用のファインダーを組み込んだため大きくなったものです。ビトーが一番でっぱりが少ないのですが、私の物は後期のものでアクセサリーシューがつけられて引っ掛かりが出来ています。
 開いた時のホルド性では横開きの左二種より右のカラートと上下開きのイコンタ35のほうが上です。
 畳んでポケットに押し込むときはビトーが最高です。逆にカラートはレンズがあるので一番損です。
 折り畳む時カラートはレンズがどの位置にあっても蓋が無いので可能ですし、フィルターが付いていても同じです。ビトーとレチナはレンズを引っ込めないと蓋があたることになります。ビトーは余裕があり少々でていてもあたりません。レチナは前玉回転ではなく距離レバーがあるので、それを利用して無限遠近くまで戻さないと折り畳めない機能を付けています。
 レチナは細心の機能を付けていても薄型のフィルターなら装着したままで蓋が閉まるように設計されています。カラートも同じ口径のフィルターですがこちらは通常型でも関係ありません。
 レチナを所有する場合は出来れば薄型を手配した方が良いと思います。

 この時代のカメラには必ず速写ケースが付属しました。レチナには色んなケースがありますが、左のビトーのようなスマートなタイプもあります。残念ながらイコンタには付属してきませんでした。
 この中で機能的に優れているのはレチナのもので、邪魔な前蓋部分が取り外せるものです。更に、カメラにストラップ用の金具があるのでケースのストラップをはずしてカメラに付けることができると言うアイデアも入っています。ビトー型のタイプのレチナケースにもこの機能があるのかどうか分かりませ、、
 この時代はカメラが高級品・貴重品でしたから、ケースもマークをプレスした立派なものです。おもちゃのようなカメラでもこのようなケースが付いていることがあります。
 1950年代までのカメラは、ボディにストラップ金具が無い物が多いので、できればケースが付属したものを購入した方が良いと思います。前蓋が無く下だけのものでも充分機能します。
 カメラのボディにもカメラ名をプレスした張り革が使われています。

 フィルム室とスプロケットの位置

VITO llのフィルム室 

 左側フィルムを入れる所のそばの白い細い軸、二重露光防止の制御とコマ数検知のためなので実にやわなものです。機能的にはこれで問題ないのです。位置も普通の反対側です。
 RETINA 1aのフィルム室

 右側の白い軸・・・日本のカメラはほとんどこの形式です。
 日本のカメラに慣れた目には一番安心感のある形式です。
 ファインダー覗き穴は日本の感覚ではお粗末です。、
KARAT36のフィルム室
 レンズの下側の羽車・・・フィルムを押さえる小さな金具があり、パーフォレーションの乗り越えを防いでいます。この小さな金具を起こしてフィルムを入れ、元に戻して蓋を閉めます。
 フィルムのガイドレールが一本になっています。
 IKONTA35のフィルム室
 下の小さい歯車二個使用
 ガイドレールの外側のものが普通より離れています。
 これだけがフィルムが右から左に進みます。普通のネガと比べると逆立ちした物が出来ます。自分で暗室作業をする時に戸惑うかもしれません。
 全体はぎざぎざなどつけずが非常にシンプルに出来ています。機能的にはこれで上等と言うことなのでしょうね。
 巻上げをはじめすべての機能は底面にすべて集まっています。
 ファインダー覗き穴はレチナ1a同様穴を開けただけのものです。

 スプロケットは上の写真のように全然違うところに配置され、機能も異なっています。日本のカメラはレチナと同じ物が多いです。
 カラートのフィルム室の黒塗り部分の溝状のものはかなり深く、画面のフレームもこのぎざぎざが残ります。ネガを見ると画面の左右がすっきりとした直線ではなく、凹凸があります。しかし、出っ張りがあっても有効36mmは減らされていません。ネガチェックや伸ばし機にかけたときに違和感?はあります。
 ファインダーの覗き穴はレチナ1aやイコンタ35がお粗末です。ただ、この時代のファインダーはどれも覗いた感じは同じようなもので、後年のブライトフレーム付き等倍ファインダーなどとは比べ物になりません。画面周辺のフレーミングには不安を感じます。覗き方で視差が生じますが、それをカバーするほど視野率が低く85%とかです。余分な写り込みがあるのと、至近距離のパララックスを常に頭に入れておかなくては使えません。

 このように、この三種にはそれぞれ少し違うところがあります。
 それぞれのカメラについては、一枚目写真下にあるカメラ名をクリックするとカメラ説明にジャンプします。
 それぞれのカメラでの試写結果も順次アップしています。下のMENUEをクリックするとカメラリストに飛べます。そこからは、私のカメラの試写結果にもリンクしています。
 レチナに関してはここに取り上げた1aだけでなく2c3cについても比較記事(
レチナ三種比較)や個別解説記事があります。     2005/8/23改

各機種対照表

ビトー レチナ 1a カラート36 イコンタ35
メーカー フォクトレンダー ドイツ・コダック アグファ ツァイス・イコン
製造年 1949〜1955 1951〜54 1948〜 1952
レンズ カラースコパー
50mm3.5
レチナ・クセナー
50mm2.8
ソリナー
50mm2.8
ノバー
45mm3.5
焦点合わせ 前玉回転
目測
直進
目測
2以降は連動
直進
距離計連動
前玉回転
目測
シャッター プロンター
B 1〜300
MX
セルフタイマー
シンクロコンパー
B 1〜500
MX
シンクロコンパー
B 1〜500
MX
プロント
B 1〜200
X
セルフタイマー
重量 430g 510g 660g 460g
フィルター 29.5ねじ込み 29.5ねじ込み 29かぶせ
フード 29かぶせ 32かぶせ 32かぶせ 29(32)かぶせ
レリーズボタン 前蓋部・右 ボディ・右 ボディ。・右 レンズボード・右前
巻き上げ 右上部ノブ 右上レバー 右上レバー逆方向 左底面ノブ
カウンター 手動順算 手動逆算
巻上自動ストップ
手動順算 手動順算
巻上自動ストップ
前蓋方向 右手側ヒンジ 右手側ヒンジ 蓋無し前後 下ヒンジ
アクセサリー
シュー
最終バージョンのみ
あり
あり
あり
あり
ストラップ金具 なし あり なし あり
三脚穴 アダプター付小 小(前蓋)

試写比較


カラート・ゾリナー

レチナ・クセナー

ビトー・カラースコパー

 左のカラーとが一番鮮やかな印象を受けます。同じような条件で撮影していますが美術印刷の酔うには行きません。後のカラー鉄板の色がかなり違いますので判定は難しいですが、他の写真からも、ゾリナーが一番派手、次がスコパー、クセナーが一番大人しいような印象は受けました。こうしたところは好みの問題、そして被写体によるでしょうね。

その他のクラシックカメラは    

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