KINAX Senior
キナックス

 キナックス シニア 1950〜57 フランス  
         IPO社(Ste Industrielle de Photographie & d'Optique )
   レンズ ベルチオ SOM BERTHIOT PARIS MAJOR KINN 105mm4.5
   シャッター  B 1 〜 350 シンクロつき(X接点ではありません)
   フィルム 620 赤窓式巻き上げ 6×9 8枚撮り
          
 日本ではあまりなじみの無いフランス製のカメラです。
 ほぼ同じものにメジャーと言うのがありますが、低速シャッターが省略されているようです。つまり、このシニアーは高級バージョンのようです。 バージョンとしてはメジャー(MAJOR)下にキナックス・カデット、ベビー・キナックスと続くようです。更にI・II・III型など実にたくさん有ります。レンズもそれに応じ高級の方はこのベルチオかアンジェニューですが、下がるとキナックスレンズ、メニスカスレンズ(フジペットなどと同じ)になるようです。
 フランスカメラは、隣にカメラ大国ドイツがあったので、どうしても発展できなかったようですが、スプリングカメラでは他にポンティアックなどがあり、二眼レフではセムフレックスなどと言うマニア好みのものがあります。
 それらを含め、フランスのレンズはもう一つの有名ブランドのアンジェニューなども、少し柔らか目の味があると特定のファンが居るようです。
 注意点は、このカメラはUSAコダック同様620フィルム仕様ですから120からの巻き替えが必要です。620カメラをお使いで無い人には厄介な物で、スプールの手配など困難と結構な出費が待っています。
 このキナックスは二眼レフキナフレックスを含め非常に多くの機種が作られています。それだけ、フランスでは売れたものと思われます。
 カメラ全体の設計、造りは非常に良いものです。

  

 レンズ周り

 上部にIPOのロゴが誇らしげに刻まれています。
 このシャッター周りで変わっているのは、被写界深度の目盛りを見ていただくと分かるのですが、絞りの配列が普通と違います。
 開放の4.5の次が6.3になっています。
 これは開放の4.5を基準に1/2になる値です。その次からは普通の配列になっているので通常の撮影で戸惑うことはありません。
 他のメーカーは6.3など使わずに5.6を使うのですが・・・

 シャッターの周りに簡易露出スケールのついたものもフランスカメラには存在します。なるべく簡単にというフランス流の配慮だったのかと思われます。

  距離合わせは前玉回転です。この個体はアメリカ向けですからフィートになっています。

 試写に関しては若干のトラブルがありますが、予想以上に良いレンズと言う結果が出ています。
 シャッターリング周り

 ここにも当然6.3の刻みがあります。5.6の刻みはありません。
 こうした時代のレンズはこんな明るい方では解像度が落ちるのであまり使うこともなかったので問題はなかったと思います。

 このレンズは、目測での近距離撮影を意識して避けたのか、前玉開店のピッチの関係なのか、『7フィート』までしかありません。
 この距離だと、ポートレートのは遠すぎます。多少疑問を感じる設計です。

 設計はここでもすべての目盛りが上から見えるように配置すると言うよく出来たものです。

 このレンズの距離リングは三本の小さなネジで止まっています。緩めれば距離の狂いは直せます。
 直せると言うことは狂うと言うことで、私のものは角度にして50度くらいレンズが引っ込む方向に狂っていました。したがって、最初の試写では無限が出ていなくて、遠距離はピンボケ、7フィートの時でも12フィートくらいに中心がありました。調整を済ませてから、試写を繰り返します。
 たすき部分

 ものすごく丁寧に作られた構造です。
 レンズの平行性を重視した結果かと思います。ドイツのカメラでもここまで支えたものは少ないです。
 そのくせ。カチッと納まった感じがしないのですが・・・
 畳む時は左右たすきの上の部分の歯車状のものを少し動かすだけですんなり畳めます。
 たすき、右下の穴の部分にレリーズが取り付けられるのですが、金具がちゃちなのか破損しています。
 シャッターに埃が入るような穴を開けない配慮かと思います。それと、レリーズボタンにレリーズのあるものはスプリングカメラでは連結不良が起きてレリーズも使えなくなるときがありますから、この方式は良いと思われます。
 フィルム室

 赤窓式のカメラですから、取り立てて変わった機構はありません。
 ファインダーは折りたたみのアルバタ式のものです。
 スプリングカメラ時代のファインダーはこうした折りたたみの方が覗きよいものが多いです。

 常焦点カメラ
 昔からピンボケはアマチュアカメラマンの悩みでした。
 今のように35mmカメラで短焦点のレンズが付いて、高感度フィルムで絞りも一杯絞り込める時代でさえ、ピンボケが出ます。
 このカメラのように中判カメラ、それも6×9などは標準レンズといっても105mmです。おまけに目測です。ピンボケが出来て当たり前なのです。
 それでも、素人が簡単に使えるようにIPOも考えました。
 この時代、こうしたカメラが使われるのは、風景写真が主でした。そこで、このカメラには、『何処でもピントが合っています』と言う上焦点化のポッチが付いています。
 絞り f11と16の中間、距離は30フィートのすぐ手前です。
 これを被写界深度で計算すると、4.5mくらいから60mくらいまできちんと写ると言うことです。まあ、実用範囲でしょうね。
 下は、その指示通りにしたものです。たしかにきれいにピントはいっています。