Welta Welti I
ウエルタ・ウェルチ・1

 WELTA WELTI I
  ウエルタ・ウエルチ 1
  Welta Kamera Werke    1945位
 
レンズ カール ツァイス イエナ  T テッサー50mm2.8 〜22 フィルター32mmカブセ
 シャッター VERUB ベルブ B 1 〜250
 X接点
 目測式直進ヘリコイド  560g

このカメラを作った時にはウエルタは東ドイツ側に残されていました。シャッターにもペンタコンのマークが入っていますが、カメラ生産は公社のようなペンタコンに吸収されてゆきました。ウエルタとしては最後の方のものかと思います。
35mmカメラはほとんど横に置くように思いますが、ウエルチは縦に置くのを前提にしているらしく前蓋にスタンド金具があります。長年スプリングカメラを作ってきたのでその作法を守っているのかと思います。
 これにはカール ツァイス イエナ テッサーが付いていますが、他にはクセナーやトリオプランに付いたものがあります。シャッターもコンパーのものなどいろいろな組み合わせがあるようです。
 このカメラは1935年から1950年まで生産されたようですが、この個体のレンズには赤文字のTが入っているコーティング付のものですから戦後のものに違いありません。
 私としては距離がmなのがちょいと不満です。
 絞り調節が古典的にレンズの下側です。フードをつけると何ともやりにくいものです。コンパーではないのに・・・
ウエルタらしいアイデアの一つ、前蓋を閉めるとき自動的にレンズが無限遠に自動的にする機構です。
前蓋を閉めるとAのレバーが下に下がりBのレバーを押し下げ、左のBの位置にします。近距離の時は右のようにBは上に来ているのです。簡単なものですが、レチナはレンズ保護のため無限遠出ないと蓋が閉まらないのですが、自動的に戻してしめられる方が便利です。
Cは距離調節つまみです。距離を指示する板が下側になり覗き込まなければならないのがちょいと理解できない設計です。

 ウェルタは世界一歴史のあるカメラメーカーといわれながら第二次世界大戦後に東ドイツ側に入ってしまったため、カメラの近代化には付いてゆけず、ペンタコンに吸収され、ブランド名も消えて行きましたが、このカメラでも上のようなあるほうが絶対に便利なアイデアなどを取り入れ、前玉回転の見えますがシャッターごと直進で前後させる機構も取り入れています。しかし、生産を始めた1935年当時は良いにしても戦後になると、見るからにライバルたちよりは古いイメージです。これも計画経済の社会主義のためなのでしょうか。


 上部と背面

 P
 パララックス補正装置
  ウエルタお得意の方法です。Pの所にあるポッチを操作するとファインダーのお尻の部分がぽんと1mmほど跳ね上がって頭切れを補正するものです。実に簡単でペルレにも付いています。惜しいのはアクセサリーシューを付けたためかファインダーがレンズの真上に無いのです。横方向の補正は出来ません。ただ、この時代のカメラには全くない優れたものです。

 
R  自動巻きとめ解除ボタン
  このボタンを手前に引くと巻き上げノブが回転します。確実に一こまで止まりますが、シャッターボタンとの連携が出来ていないので操作をすればいくらでも空送りが出来る不完全な装置です。もちろんセルフコッキングはありません。慣れるまでは不安です。

 カウンターは手動セットの順算式です。逆算で止まってしまうレチナ方式よりはフィルムがある限り送れるこの方式のほうが好きです。
 背中には被写界深度表がありケースに入れても見られるようになっています。目測時代は被写界深度は大切な武器でしたからここまでこだわったのかもしれませんが、老眼の私では厳しいです。

 底面
 非常にすっきちした物で、寂しくないようにかWeltaのロゴが入っています。
 三脚穴はアダプターで今の小さい方に変換されていました。三脚穴のそばの小さなボタンは前蓋を開けるのもです。
 ご覧のようにすっきりしているのですが、巻き戻しボタンの類が存在しません。上にも下にもどこにも無いのです。
 これには最初にこのカメラを握ったら驚くと思います。確認しないままフィルムを入れて撮影したら青くなるかもしれません。
 このカメラの
巻き戻しは巻き上げノブを引っ張りあげて歯車を解除するのです。他ではあまり見られない方法ですので気をつけてください。
フィルム室
 非常にスタンダードなものに見えますが、スプロケットの上にカウンターとコマの送りしろ用の歯車が見えています。このスプロケットはフリーで何時でも逆回転できます。制御は巻き上げノブの軸にラチエットがあります。
 上の巻き上げノブを持ち上げてありますが、この状態で巻き取り軸が解除されて巻き戻しが出来ます。35mmカメラの巻き上げノブが持ち上がると言うのは非常に珍しいです。
 コマ送りはきちんとそろうまでは行きません。
 Welti 1 と Vito 2

 上がフォクトレンダー・ビトーIIです。この式のスプリングカメラでは小さくて軽いものです。目方は420gほどです。
 ウエルチ1も大きさはほとんど同じで小さく出来ていますが、目方の方は少々重く出来ています。560gで手に持っても重さが感じます。
 同じ目測機のレチナ1aが520gほどですから。一番重いことになります。
 握った感じは小さく感じるのですが、材質の違いなのでしょうかね。
 見かけも一番古臭いのは発売が一番先だからかもしれません。ただ、このカメラにはテッサーが付いていますのでそれだけでも欲しかったものです。イコンタ35のテッサー付の比べれば割安になります。ただ、東ドイツ製になってからのものでこれだけきれいなものは中々巡り会えません。
 小さい金具ですが、ストラップが直接付けられるのは今のユーザーにとってはありがたいことです。