Enlargement    

  引伸ばし作業    

  モノクロ写真を鑑賞するには、白黒逆で小さなフィルムから、印画紙の引き伸ばして焼き付け無くてはならない。
 カラーの場合、この作業はラボ・写真屋さん任せである。昔は、ジャンボ機という自動プリンターがあちこちにあり、簡単にサービスサイズに焼いてくれた。カラー時代になり、その機械もカラー専用に変化してしまったので、今、白黒を焼いてもらおうとすると、カラーの何倍も掛かる。
 ここで、簡単にモノクロを楽しみたい方に、朗報をひとつ・・・コダックからカラーフィルムと同じ処理で白黒写真が出来上がるフィルムが出ている。これは完全にカラーフィルムの色無しだが、仕上がりはきれいな白黒写真になってくる。これなら、、普段のカラーと同じ感覚で楽しめますよ。
KODAK PORTRAというものです。

    引伸ばし作業

引伸機の準備 引伸機はレンズ交換式です。伸ばすフィルムによってレンズを換えますが、普通の35mmなら50mmのレンズを取り付けます。日本で出回っている普通のマウントはライカマウントです。
フジとニコンの物が多く出回っています。
それと、、作業中に手元を照らす安全ライトも点灯させます。引伸機と連動させると良いのですが・・・これも、今流行の何でも使える式のは明かりの種類が違います。
バットなどの用意 印画紙の大きさに合わせたバットを現像・停止・定着の順に並べます。水洗いは他の容器でも結構です。バットは大は小を兼ねますが、薬がたくさん要ります。一度使うと能力が落ちますから、無駄な寮を使わない方が良いです。
薬品の準備 印画紙の現像処理も20℃が基準です。冬は専用のヒーターがありますが、二重にしてお湯を足しながらでも十分です。印画紙は安全光で見られますから、多少の温度差の進行度の違いは、目で見て調節できます。作品を作るのでなければ、気楽にやった方が楽しいですよ。
印画紙 印画紙はネガによって使い分けます。薄くてコントラストの無い露出不足などの場合は4号頃と白がはっきりしたフィルムは2号・・・普通が3号と言う具合です。今のカメラはほとんど3号でしょうね。
 先ほども書いた何でも印画紙はこの使い分けをフィルターでするものです。便利ですが割高です。
 又、台紙によって本当の紙のもので「バラ板紙」とよばれる昔からのものと。プラスチックコーティングの『RCペーパー』がありますが、水洗い処理と乾燥処理の面ではRCペーパーが楽です。マニアと人物用の写真屋さんはバラ板紙ですがね。
試し焼き  引伸ばしはネガの濃さ、引き伸ばす倍率などによって、当然露出が変わります。専用の露出計がありますが、一般的には葉書の半分くらいとかに切った印画紙に何段階かの露出で焼いて標準現像例えば一分三十秒とかで現像して一番良いので決めます。これば試し焼きです。この時、印画紙等を全部しまって、明るいところで見る事をお勧めします。暗室電球はオレンジ色みたいな色で人間の目には正確なコントラストが見えにくくなります。
現像・停止・定着 この行程で、試し焼きは現像時間厳守で行います。定着に入ると同時に電灯をつけても大丈夫です。本当はまだ感光するのですが、現像されないまま定着液に溶かされるからです。
本焼き 先ほどの試し焼きで割り出した露光時間で焼き付ける。慣れてくれば、薄すぎるところに余分に光を当て『部分焼き』したり、黒すぎるところを隠して『覆い焼き』したりします。
現像・停止・定着 この行程の現像は仕上がり優先で切り上げたり、延ばしたりして結構です。結果オーライですからね。停止定着はほぼ時間通りですが、定着液にある間に次のを焼きますから、たまってきます。紙なのでお互いに張り付いて定着液が均等に廻らなくなるから、かき回すのを忘れないで下さい。
水洗い  これも流水でやりますが、ちょろちょろで溜まってきたときに薬品処理して違う容器で水洗いすると効率的です。
 写真の変色はほとんどが水洗い不足です。ことに、バラ板紙は定着液が染み込み易いので十分洗ってください。
乾燥 バラ板の光沢紙はフェロタイプと言うぴかぴかの金属板に張って熱乾燥してつやを出したが、今Bの印画紙は自然乾燥で光沢が出ます。
仕上げ イーゼルと言う焼き枠で印画紙を押さえて焼くので四方に白い枠が残る、それを切り落として仕上げる。

 これだけのことであり、フィルム現像より時間は掛かるが、目で見えるから習得しよい。貴重なフィルムの現像タンク現像はいつまで立っても緊張するが、こちらはネガがあればやり直せますから、どんどんやって、自分流の焼き加減などを作ってください。焼き加減で随分違って見えますよ。


   薬品

コレクトール 昔から変わらず、定番の印画紙現像薬です。
フジフィックス フィルムと共通の定着液です。

   引伸ばしレンズ

  撮影の時のレンズには随分気を使う人も、引き延ばし作業に入ると、レンズに無頓着な人が多いです。
 極端に安いものは駄目だろうというだけで、フジだとかニッコールなら問題にしない場合が多いです。
 しかし、引伸ばしは最後の仕上げ過程です。当然、引伸ばしレンズでの差も出て来るはずです。
 昔から言われるのは、『撮影レンズと同じもので引伸ばすのが理想・・・』と言うことです。
 まさか、そんなわけにも行きませんが、まあ、同じ系列のレンズでやれば良いだろうと思います。
 
 引伸ばしレンズとしては、フジ・ニッコール・ラッキーなどが普通に出回り、ほぼ全部がライカマウント39mmです。
         
 しかし、海外ではアマチュア用でもこの規格でない物が普通に出回っていますから、eBayなどで買う時には十分気をつけてください。
 引伸ばし機が大きなものであれば、レンズを取り付ける部分が交換できるようになったものが多くなります。そういう機種であれば、39mmのねじ込み式でなくても、レンズボードを探すか、自作すればほとんどのレンズが使用可能になります。
 下に私が買った、引き伸ばし用のエクターを富士のS690に取り付けるボードの作成を載せます。難しいものではありません。これが出来れば引伸ばしで遊べるようにもなります。
   ※参考までに、このレンズの製造番号 RM128 から、製造は1953年と分かります。
      コダックのレンズの製造番号は
        C A M E R O S I T Y
        1 2 3 4
  5 6 7 8 9 0  と、数字を割り振っています。
     このELエクターは4群4枚のドグマータイプだと書いたHPがありました。確認は取れていません。

 
 レンズボードの作成

  材料  2mm厚アルミ板   仕上げ用艶消し・黒色ペイント

 右が丸いのが純正のレンズボードで、直径89mm、レンズ取り付けには39mmのネジが切ってあります。

 左のアルミ板はホームセンターで売っているもので、厚みが2mm幅が100mmのものです。
 センターに釘でくぼみを作っておいて、コンパスで外周とレンズ取り付け穴の円を書きます。
 アルミ板は柔らかいので鉛筆で書いても普通には消えない程度の印が入ります。

 上に乗せたのはこのページの写真にある、コダック・エクター100mmの引伸ばしレンズです。
 ライカマウントよりわずかに大きな39.5mm径でリテーリングリングで取り付けます。
 半分出来たところです。
 ホースソーなどが無くても、ドリルで線のそばにたくさん穴を開け、ニッパーなどで余分を切り離し、あとはヤスリで線のところまですり落とします。
 これも、アルミ板なのでさほどの苦労は要りません。
 ほぼ仕上がったところで、バリを落とし、現物と合わせてみます。

 レンズ取り付け穴は40mmの円を書いておいて削り出せばよいでしょう。
 レンズによってはもっと小さいものも出回っています。
 レンズボードを作成できればオメガ用だとかも富士S690などで使えます。

 最後に、黒色艶消し塗装をすれば完成です。
引伸ばしレンズ群
 上左 ELニッコール50mm
 上右 ELニッコール80mm
 下左 フジノン105mm
 下右 ELエクター100mm

 フジノンはS690の純正ボードにつけています。ニッコールとは共通のライカマウントなので付け替えて使います。
 ELエクターが付いているのは今回作成したレンズボードです。

 50mmは35mm判の引伸ばし用
 80mmはセミ版から67くらいまで、100mm105mmは6×9判と言うことです。
 引伸ばし機の柱が長ければ長い焦点のレンズでも四つ切とかだとそのまま使えます。
 カバーする範囲(イメージサークル)は焦点距離が長い方が大きいので、単純に言えば画質に関しては有利ともいえます。