焦点深度
被写界深度

 ニッコール85mmニコンは色分けで表示しました

 写真を撮る上で考えなくてはならないことの一つに、写したいものにちゃんとピントがあっているか・・・と言うことがあります。写すものが平面なら良いのですが、大体のものは立体物です。おまけにいくつかのものが入るときそれぞれの距離が違います。
 風景写真や記念写真などでは前景から背景まできちんとピントの合った写真がほしいことが多いです。それにひきかえポートレートや花などの写真では後ろをぼかして省略した方がすっきり見えることがあります。
 これを調節するのが『絞り』です。数字が大きい方、つまり絞り込んだ方がピントの合う範囲は広くなります。しかし、この値はシャッターとの組み合わせで決まってしまい、むやみやたらと絞り込むとシャッター速度が遅くなってしまい、手持ちでは撮れなくなります。逆に開けようとしてもシャッター速度の高速側の制限があって開けられない事もあります。
 標準のASA100のフィルムで昼間の1/125・f11の時f16にしただけでシャッターが1/60になり本当の意味での手持ちは厳しくなります。中判カメラなどではf22を使いたいときもあります。そんなときは高感度フィルムを用意するか三脚を使います。モノクロームでフィルターを使うとさらに絞りが2段ほど開いてしまいます。
 逆にポートレートで絞りをf2.8まで開けたくなると1/2000となり最近のカメラ以外ではそんな速度はありませんね。そんなときはNDフィルターを使って暗くするしかありません。
 この焦点深度は昔のレンズの多くはピント合わせのマークの両脇に刻んでありました。範囲は前に少なく後ろに多いものです。オートフォーカスですと無意識に一番前に合わせがちですが、本当ならピントを合わせたい範囲をきちんと決めて、自分の使う絞りの範囲の焦点深度を利用して、その範囲に納めるようにピント位置を決めます。
 この範囲は焦点距離が長くなるほど狭くなります。
 前方向に少ないとは言え後ろの半分くらいは有効なピント範囲があるのですから利用しない手はありません。
 たとえば75mmのレンズで前景の4mにピントを合わせたf16で撮影すると前は2.7m後ろは8mくらいの範囲にピントがあっています。これを少しずらして8mに合わせると前は4m後ろは50mくらいまでピントが合います。f22を使えばほぼ同じ位置で3.5mから無限遠までピントが合います。前景を入れて富士山までくっきり・・・が可能です。
 こうした技術?も、オートになって段々消えて行きますね。
 クラシックカメラではレンズに付けられない時はこれを表にして裏蓋とかに貼り付けたカメラもあります。つまり、昔の常識だったものです。
 風景を撮影するカメラマンが三脚を立てるのもこの焦点深度を利用するため、シャッター速度が遅くなってくると言う意味もあります。決して下手で手ぶれすると言う意味ではありません。

      

         ローライコード3の表示板                         イコンタ523/16の表示