Nikon F


 日本のカメラが世界一の座を占める、大きな金字塔的なカメラです。
 日本光学の技術の結晶であるニコンFは発売と同時に一眼レフの完成形としてトップの座に躍り出ました。
 一眼レフの歴史は旭光学のアサヒフレックスから始まったようなものです。今のペンタックスです。
 プリズムファインダーではなく上から覗くファインダーと、即写性を向上させるための普通のファインダーの二本立てからスタートしたのです。ニコンFはクイックリターンミラー・自動絞り・ペンタゴンファインダーと全ての最新鋭の機能を盛り込んでデビューしました。昭和35年当時でf2の標準付きで59000円くらいでしたかね。大変な高額カメラでした。
 世界に躍り出たのは東京オリンピックの時でした。
 世界中のプレスが集まるオリンピックを舞台に各社の売り込み合戦が展開されましたが、超望遠を使うには一眼レフが最適でした。そのため、一眼レフ+1000mmとかの組み合わせが使われることになりました。ライカの出る幕ではありませんでした。
 ところが、この超望遠はすごい重量ですから、ボディだけを持つとマウント部分からもげてしまいました。それを見越して日本光学は各競技場に修理車を配置して修理に当たり、プレスに迷惑をかけない作戦に出て、一躍、Nikon as No.1 の名声を勝ち得たのです。それまでにSシリーズで培った丈夫なカメラ作りの伝統が花開いた形です。
 カメラ単体なら、ズノー・トプコン・ミランダなど、ニコンを超えるのではないかといわれるものも出ましたが、ニコンの名声を崩すことは出来ませんでした。
 ニコンの成功の一つに、レンズマウントを長年いじらなかったこともあります。大事なニッコールが次のボディにも使えるという安心感は大きな支えでした。ライバル・キャノンがときに応じた形でマウントをいじったのと対照的でした。一番高いカメラがユーザーの財布まで心配してくれたことになり、アマチュアの支持が集まりました。こらはライカとその互換機の安心感に通じるものでしょうね。
 私にとっては、ニコンF発売以来のユーザーでもあり、一番思いいれのあるカメラです。
 それなのに・・・今では『クラシックカメラ』だそうです。
 私も、クラシックなのでしょうね。