Ensign Selfix 820
エンサイン セルフィックス 820

 セルフィックス 820
  イギリス エンサイン(ホートン)社 1950頃
 
レンズ ロス エクスプレス ROSS EXPRESS 105mm3.5〜22 シングルコート
 シャッター イプシロン T B 1 〜
 250
 フォーマット 6*9 6*6 切り替え マスク内蔵 930g
 二重露光防止機能つき 赤窓式巻上げ

 英国の誇る6*9スプリングカメラです。これも他のセルフィックス同様レンズには普及品の三枚玉エンサーの付いたものとこの個体のように3群5枚構成の高級レンズ、ロス・エクスプレスの付いたものがあります。
 カメラはずしりと重いダイキャストボディのしっかりした作りで、ファインダーはこの時代では最高のものです。
 簡易型でも二重露光防止機能が付いていますから中判でしっかりした写真を撮るときにはありがたいものです。
 同列のイコンタ、ベッサ、ボナフィックスなどと比べかなり重いものですが、メダリストに比べると軽く、マミヤRB67などから見るとコンパクトカメラになります。

 セルフィックスシリーズの優れている点として私が評価したいのはこのファインダーです。普通のアルバタ式なのですが接眼部に白く書いたフレーム枠を対物レンズの内側に反射させてブライトフレームとして見せるものです。この時代のファインダーが非常に見難い中で出色の出来です。
 このシステムのおかげで6*9と6*6の枠を簡単に表示させています。
 上部、左のノブはスプール軸を持ち上げるもので被写界深度スケールを兼ねています。小さなボタンは前蓋開閉兼ファインダー引き起こし用、右のボタンがシャッター、次が巻き上げノブです。二重露光防止になっていますが表示はありません。

 このカメラも左手シャッターになっています。昔の常識だったようです。
 820のボディレリーズはしっかりした感覚で今の人でもフィーリングには違和感を感じないかもしれません。
 シャッター回りです
 この時代のシャッターは等倍列になっていません。更に最高速はずれたものになるイコとが多いです。
 50・100と来て250になっています。
 今式に絞りまで1/4段階までとかシビアに考える人にはおよそ使えないものでしょうね。カラースライドでもそんなにまで神経質にならなくても取れるように思うのですが・・・
 少し後になるとイプシロンシャッターにもシンクロが付くのですがこれにはありません。
 レンズはテッサー、スコパーなどと並び賞されるロス・エクスプレス105mmが付いています。このレンズを使うためにセルフィックスを探す人が多いです。それだけに同じものでも、エンサーの付いたものは極端に値段が下がります。
 セルフィックス820ご自慢の一つが矢印のところにある二枚の羽根です。これを完全に内側にセットすると6*6になります。反対側に倒してゆくとフィルムガイドのローラーの軸を利用して両脇のフィルム室にきれいに納まってしまいます。
 残念なのは裏窓の開閉がマスクに連動していないことです。フォクトレンダーのベッサではこれが連動していますから、マスクを入れていたかどうか忘れても大丈夫に出来ています。そんなこと・・・と思うでしょうが、現にうっかり物の私はフランカ・ボナフィックスIIで分からなくなりました。
 6*9判のカメラはフィルムがたくさん要るのでサイズダウンできるようにしたものが多いのですが、6*6に落とすものと6*4.5に落とすものの二派あります。経済性ではセミ判に落とす方が合理的でしょうね。この時代の後に6*6が流行したので6*6にしたのかもしれません。セミ判は1940年代で消えてゆきましたから・・・
 セルフィックス兄弟です。
 左が16-20のセミ判機、右が820の6*9判機です。さすがに随分大きさが変わります。
 エンサインの場合型番の前で何枚撮り、後ろで使用フィルムを示しています。20は120の略です。
 つまり16−20は120フィルム16枚撮り・・・セミ判です。
 820はハイフンを抜いていますが、120の8枚取り・・・6*9判です。
 気楽に中判の魅力を味わうならセミ判が手頃だと思います。ただ、セミ判は早くに下火になったので程度の良いものが少ないのが残念です。

 このように古めかしい蛇腹カメラでもそれぞれに工夫を凝らしています。
 レンズは4枚玉のテッサーが基本になりそのバリエーションで進化して行ったようですが、その下の三枚玉でも充分な解像度があるのには感心します。